三日月の雫
だけど、あまりにもしどろもどろになっている伊織に、それ以上突っ込む気になれず、僕は二つ返事でOKした。


どうもシックリいかないまま、僕は夕方を待って店に向かった。


店に着くと、いつものようにコーヒーを買う。

そして制服に着替えると、コーヒーを飲みながらタバコを吸う。

バイトに入る前はいつもこの流れだった。


コルクボードには、柚羽が残したメモがまだ貼られてあった。

番号を登録したけれど、まだ、かけていない。


最後くらい、一緒に仕事をしたかった……――。



――バンッ……


「お疲れ様です!」


バックルームのドアが勢いよく開き、来るはずのない柚羽の姿がそこにあった。


なぜ、彼女が来るのか。

理解できず呆然としていると、柚羽は中に入ることなく、そのままドアを閉めた。

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