三日月の雫
近くの高校が文化祭前日とかで、制服を着崩した高校生が後を絶たない。


柚羽と目が合う。

ただ、無言で微笑みかける、ほんの数秒。

あの日と全く同じで、僕たちは会話さえもなかった。



「お疲れ様です!」



非情にも、時間は僕の気持ちなど待ってくれはしない。

柚羽と入れ替わりのヤツがやって来た。

柚羽は「お疲れさまでした」と言い残すと、それ以上の言葉はなく、バックルームに下がった。



「悪い、ちょっと一服してくる」



何かしら理由をつけて、バックルームに下がろうとする。

けれど、世の中ってものはそう甘くはない。



「あっ、すみません、結崎さん。この前、ギフト受付やった時に分からないところがあって、ちょっと教えてほしいんですけど」



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