三日月の雫

――別れたはずだった。


けれど僕たちは、付き合っていた頃と変わりない過ごし方をしていた。

いつも、当たり前のように僕のそばにいるかんな。

かんなに誘われると、僕はかんなを抱いた。


かんなは、別れを切り出した僕の気持ちが、本心ではなかったと思い込んでいるところがあった。


僕が最初にかんなを好きになったから、そう簡単に自分のことを好きでなくなるわけがない、と。


だから別れを告げた時、彼女は笑いながらすんなりと受け入れた。


別れてからも関係が続いているのだから、そう思うのも無理はないだろう。



気持ちのない彼女を抱くなんて、最低だと思った。

けれど、あの頃の僕は理性よりも快楽を求めていたのかもしれなかった。



さんざん世話になった人の妹だというのに…――。

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