三日月の雫
断る理由なんてなかった。


僕は柳さんとの電話を終えるとバックルームに行って、かんなに電話をした。



『えっ?遅くなる?』

「うん。ナイトで入ってるヤツが急にコケて」

『…そっか。それならしかたないね』



店の電話から掛けたためか、かんなはすんなりとOKした。

もしも、携帯からだったらこんなにもすんなりといかなかっただろう。

着信画面に店の名前が出るように、わざと店の電話を使った小細工。


僕は、こんなことをしてまでも、柚羽に会いたかった。

かんなや啓介さんに対する責任。

頭では分かっているのに、気持ちと身体はそこから逃げ出そうとしていた。

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