ラビリンスの回廊
第一章
バイバイ
「玲奈。あんた、東高の玲奈だろ?」
カツン、カツン、カツン…
獲物を追いたてるように、ぼこぼこに歪んだ鉄パイプがアスファルトで弾かれる音がする。
弾かせている当の本人は、真っ赤な長い髪をなびかせて、鋭い眼光で玲奈と呼んだ女を見つめていた。
髪以上に赤い特攻服には、背中に大きな龍の刺繍が金糸で施されている。
それは、この辺り一帯で名を馳せているチーム『朱龍』のトップだと一目でわかるいでたちだった。
玲奈を取り囲むようにして、様々な色の特攻服を着るレディースがいるが、赤は彼女一人だ。
赤を着れるのはトップだけ、という、暗黙のルールに乗っ取ったものだった。
「なんとか言えよ」
黙りこくった相手にしびれをきらしつつも、あくまで声の音量は抑え、そのかわりにたっぷりと威嚇を込める。
それが合図だったかのように、とり囲んでいた者たちがにじりよった。
そこまでしてやっと、玲奈は口を開いた。
「だったら、何?」