ラビリンスの回廊
ベンス兄妹がいない間に話してしまおうと思っているのか、ヴァンは珍しく饒舌だった。
意見は言うものの、重大な事柄に関しては口をつぐみ、常にベンス兄妹の様子を伺っている玲奈。
本当によく見ていると言わざるを得ない。
じっとりと額が汗ばんでいる玲奈に、ヴァンはさも涼しそうな顔で答えを待つ。
いつベンス兄妹が来るかもわからないのに余裕の構えなのは、今すぐに玲奈の答えが欲しいわけではないからだろう。
ただ玲奈にプレッシャーを与えるためだけの言葉のように思えた。
「……で?」
少し落ち着いた玲奈は、多少開き直りながら言った。
ヴァンはフッと息をもらす。
「私が言ったことを覚えてますか?
我が王は、欲張りなのですよ。
『光』も、欲しているのです。
高貴な乙女の──あなたを、ね」
「──ッ!!」
これ以上ないというくらいのヴァンの微笑みに、玲奈は思わず立ち上がった。
真っ白な思考は、意識を繋ぎ止めるには困難で。
驚愕の玲奈の瞳に映るヴァンが、ユラリと揺らめいたように感じた。