ラビリンスの回廊
その時。
「大変です…ッ!!」
血相を変えたエマが、ヴァンの前に飛び込んできた。
乱入があったことで、玲奈は一瞬にして意識を掴んだ。
安堵する間もなく、エマのただならぬ様子に不安が広がる。
当のエマは、ぎゅっと胸元に布を抱え、蒼白な顔は今にも倒れんばかり。
走ってきたのが一目でわかるほど息も荒く、何度も何度も唾を飲み込みながらなんとか大事を告げようと試みる。
いつものエマはそこにいない。
そしてそれが出来ないとわかると、すぐさまヴァンの袖を引っ張った。
「早く……とにかく早く来て……っっ」
今にも泣き出しそうなエマの言葉を聞くよりも早く、ヴァンは川の方へと走り出していた。
もちろん玲奈もその後を追う。
エマも息を整える余裕もなく、また走り出した。