ラビリンスの回廊
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湯あみをするために服を脱いだとき、もっと周りに警戒するべきだった……
ガタガタと、揺れるたびに跳ねる体。
目隠しされたイシュトは、その振動で自らの置かれた状況を理解した。
どうやら、板張りの上に仰向けに転がされ、両手両足を紐か何かできつく結わえられているようだ。
こんな山道は人力で運ぶしかないから、足は遅い。
イシュトはゴツゴツとぶつかる頭に痛みを覚えながらも、思考は絶さなかった。
視界の最後は、鎧を身につけた兵隊たち。
彼らの胸元には、ブラウの紋章が入っていた。
見知った顔もいくつか。
自分が王国を出たときに、あてがわれた者達だ。
戦争をおこすために……
それが今は人探しという任なのだから、不満は大きいだろう。
自分をブラウ王国に運ぶつもりのようだが、体勢を立て直し次第、また攻めいる算段を立てているに違いない。
なんとものんきな王だ。
イシュトが心の中で、立場を忘れて苦笑したとき、近くから「っつー、イテテ」と言う声がしてハッとする。
「ルクト……?」