ラビリンスの回廊
「こいつは……何も関係ない」
「しかし……」
不満げな男。
「……俺様の言うことが信じられないのか?」
そう言われてやっと男は、ルクトの素性の追及をやめた。
もちろん今だけだろうが、いつまでも愚図愚図と捕まっているつもりはない。
王への報告には、ルクトのことが加わってしまうだろうが……
イシュトの意識がそこへ向かっている間に彼らの下では、しんがりを務めていた兵たちのうちの一人が、前方へと走り寄ってきた。
「後ろから、ヴァンツと思わしきものが……!
只今、交戦中!!」
その言葉に、中枢にいた一人の兵が「ふん」と鼻で笑った。
どうやら、先程までイシュトが話していた奴がこの隊の指揮官らしい。
「相手は一人だろう。
このまま進……」
「おそれながら…!!
ヴァンツの他に、二名のものたちが……
うち一人は、例の……」
グラ、とイシュトの体が傾く。
そのまま地面に叩きつけられるかと覚悟した。