ラビリンスの回廊
剣を持った玲奈に、兵たちはたじろいだ。
驚いたのはイシュトたちも一緒で、剣を渡した立場にあるルクトすら目を見開いた。
エマは蒼白な面持ちで固まっている。
一番最初に意識をはっきりさせたのはイシュトで、しかも彼はおもいっきり吹き出した。
「ははは。
跳ねっ返りだとは思っていたが、女のくせにまさか前線に出てくるとはな。
フン、怪我してもしらんぞ」
「……うっせぇ」
前に出た自分を諌めなかったイシュトに、また心を見透かされた気がして、悪態つく玲奈。
尊大な態度なのが逆に有難く感じつつも、しかしそれもなんだか腹立たしい。
その代わりなのか、ギ、と地面を踏みしめ、玲奈は兵たちを睨み付けた。
「く……っ」
唇を噛み締めた指揮官が、玲奈の視線から目をそらし、兵たちに向かって口惜しそうに『撤退』の二文字を絞り出した。
「『光』を傷付けるわけには……ここは一旦引いて、王へご報告致しますゆえ」
イシュトへ向かってそう言ったのちの、ざわついていた兵たちの統率は見事で、指揮官の一言で兵たちはルクトたちに向けていた剣をおさめた。