ラビリンスの回廊


剣を持った玲奈に、兵たちはたじろいだ。


驚いたのはイシュトたちも一緒で、剣を渡した立場にあるルクトすら目を見開いた。


エマは蒼白な面持ちで固まっている。


一番最初に意識をはっきりさせたのはイシュトで、しかも彼はおもいっきり吹き出した。


「ははは。
跳ねっ返りだとは思っていたが、女のくせにまさか前線に出てくるとはな。

フン、怪我してもしらんぞ」


「……うっせぇ」


前に出た自分を諌めなかったイシュトに、また心を見透かされた気がして、悪態つく玲奈。


尊大な態度なのが逆に有難く感じつつも、しかしそれもなんだか腹立たしい。


その代わりなのか、ギ、と地面を踏みしめ、玲奈は兵たちを睨み付けた。


「く……っ」

唇を噛み締めた指揮官が、玲奈の視線から目をそらし、兵たちに向かって口惜しそうに『撤退』の二文字を絞り出した。


「『光』を傷付けるわけには……ここは一旦引いて、王へご報告致しますゆえ」


イシュトへ向かってそう言ったのちの、ざわついていた兵たちの統率は見事で、指揮官の一言で兵たちはルクトたちに向けていた剣をおさめた。


< 112 / 263 >

この作品をシェア

pagetop