ラビリンスの回廊


潮が引くようにいなくなった兵たちに、玲奈は大きく安堵の息を吐いた。


かかってこられたらきっと、太刀打ちなど出来なかったろう。


そう思うと、あの時は無我夢中で思い及ばなかったが、今更ながらに体に震えがくる。


「レイナちゃ~ん……」


そんな玲奈に呆れたように、ルクトが背後から声を掛けた。


「あんま、無茶しないでちょーだい」


寿命縮む~、と言いながら心臓を押さえるフリをするルクトに、玲奈は返す余裕もない。


「寿命が縮む思いをしたのはこちらですよ」

ヴァンの言葉に、ルクトはあははと笑って頭をがしがしとかいた。


「でもアチラさんはイシュトくんを狙ってたみたいだし、俺は謝んないよ~?」


そう言って細めた目の先は、イシュトに向けられた。


「イシュトくんを知ってたみたいだけど、アチラさんとはどーゆー関係?」


イシュトは一瞬口を閉ざしたが、ルクトの視線に耐えきれなくなったのか、ゆっくりと口を開いた。


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