ラビリンスの回廊
そして、ふと思い出した、川での違和感。
イシュトたちがいなくなったとき、ヴァンが迷うことなく足を向けたことに一瞬「あれ?」と思ったことを玲奈はなんとなく思い出す。
今考えれば、当たり前のことだった。
ヴァンには、心当たりがあったのだから。
よくそんなこと覚えてたな、と自分で自分に少し感心しながら、玲奈は皆からはぐれぬよう、足を早めた。
幸い何も荒らされることもなく、荷物はそのまま元あったところに置かれていた。
「今日はここで休もうか」
さすがにくたびれた顔でルクトが言う。
反対意見が出ることはなく、その場に野宿することに決まった。
エマは手近なところに布を拡げ、玲奈に休むように進言したが、玲奈は首を振った。
布が敷いてあるとはいえ、ゴツゴツした地面に寝ることは出来そうもないと踏んだからだ。
男性陣の見張り交代にまざると声を掛けたが、ルクトの強い拒否にあい、結局は渋々ながらも横になることにした。
横たわり、空を見上げる。
木々の隙間から、無数の星が降っている。
美しい星空に意識を吸われたかのように、玲奈は静かに眠りに落ちていった。