ラビリンスの回廊
「交代するから。あんたらも寝なよ」
玲奈の申し出に、ルクトは「だぁめ」と笑いながら、それでもきっぱりと退けた。
「交代は男だけでやってるし、今交代したばっかだから。
エマは眠れないって起きてたけど、そろそろ寝るって言ってたとこ。
玲奈ちゃんも寝なさいな」
にっこりと笑うルクトに、玲奈はたじたじとしながら「でも……」と反論しようとした。
よく見ればイシュトとヴァンが、火のそばで岩にもたれるように寝ている。
火に照らされているからか、顔の影がゆらゆらと揺れ、疲れが色濃く出ているように見える。
そんな二人をルクトもチラリと見て、起きていないことを確かめたようにして言葉を続けた。
「それに……こっちの世界に来て色々違って。
登山までして疲れたでしょ?」
その『こっちの世界』という言葉に、先程のヴァンの話しを思い出す。
今ならヴァンたちも寝ているし、ルクトたちには言っておいた方がいいかもしれない。
そう思って、恐る恐る切り出した。
「ルクト……エマも。
ヴァンにバレた……かもしれない」
申し訳なさそうに言った玲奈の言葉に、ベンス兄妹は一瞬顔を見合わせた。