ラビリンスの回廊
ルクトの言葉をきき、エマはうつむいたまま小さく頷いた。
「イシュト様も……言葉の端々から、そう感じます。
私が……もっと早くに……決心していれば」
「エマ……」
心配そうなルクトに向かって顔を上げる。
エマはためらいながら玲奈に向かって口を開きかけたが、ルクトがやんわりとそれを遮った。
「エマ。今言うべきはそれじゃない。
今考えるべきは、
彼らになんと言うか、だ」
チラリ、とイシュト達を見やったルクトに、エマは言いかけた言葉を飲み込んだ。
しばらく目をつむり、静かに息をするエマ。
目を開け、次に出した言葉は、先ほど口にしようとしたものとは全く違うもののようであった。
それでも玲奈は、先の様子を見ているから、何とも言わなかった。
「本来ならば、身元のわからないものは信用しないのが我々の世界ですが。
私は……レイナ様にお決め頂きたいと思います。
王国から離反していることを信用して彼らに話すか、
重大なことは伏せるか、を」