ラビリンスの回廊


そう言ったエマを、ルクトが静かに見つめる。


「あたし……?」


驚いて言葉が続かない玲奈に、エマは真摯に頷いた。


「レイナ様がこの世界に来たのは運命。
この世界がレイナ様を選んだんです。

きっと彼らがレイナ様の前に現れたのも『大いなる流れ』の意思なのだと思います。

ならば、彼らも『大いなる流れ』にとっては運命の歯車。

レイナ様の選択は、『大いなる流れ』によって既にさだめられているはずです」


「なに…言ってんの……?」


すらすらと紡がれるエマの言葉に、玲奈はやっとの思いで声を出した。


目の前にいるはずのエマが、ずっと遠く離れた場所にいるかのように感じていた。


何年も先にいるかのように感じていた。


言っていることが頭に入ってこない。


違う。

理解するのを拒否している。


『あなたの思考、行動は全て、誰かの考えなのだ』と言われているような気がして。


じゃあ、『紅玉』を探しに行くのも、

こうやって旅をしているのも、

剣を持ったのも……?


「違う……違う……

あたしが…あたしが決めたんだっ!!」


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