ラビリンスの回廊
「……もう、日本に帰りたいのかすら、わからない……
あたしの意思なのか、そのナントカってやつの考えなのか。
わからない……
わからないんだ……」
暗く沈む瞳に小さくエマを映しながら、玲奈がか細い声で言った。
「たまにはしおらしいことも言うんだな、跳ねっ返り」
玲奈以外の二人の目が、一瞬でその声の主を捉えた。
閉じていた目をゆっくりと開き、ニヤリと口角をあげながら玲奈に視線を送る。
玲奈は微動だにせず、声にも視線にも反応しない。
それに軽く舌打ちをすると、緩慢な仕草で岩から背中を離した。
「おい、俺様を無視するんじゃない」
そう言いながら、のそり、と玲奈へ歩み寄る。
玲奈からフードがイシュトの手により外され、豊かな金色の髪があらわになった。
その時になってようやく、玲奈はイシュトに気付いた。
フードが外されたことを知り、慌てて被り直そうとしたその手を掴んだものがいた。
「フン、お前がシェル王国の『光』か。
兵の言っていたことは本当だったわけだ」