ラビリンスの回廊
「あ……」
パシッという音とともに、玲奈の拳はイシュトの手のひらで包まれた。
玲奈にあたたかい熱が伝わってくる。
「おかしいと思わないか?」
熱を感じつつ気を失いかける寸前、ぐいと腕を引かれて目の前にイシュトの顔が迫る。
「なぜ兵はお前が『光』だと知っていた?
そして、なぜこの魔峰にいた?
考えろ」
ぼんやりとした意識の中、誰かの息を飲む音が聞こえた。
「お前が『光』だと知っているのは誰だ?
そしてブラウ兵と繋がりのあるものは?
俺は、お前の考えが知りたい」
「あたし……の?
でも、あたしの考えじゃ、ないかもしれない」
くしゃり、と顔を歪ませた玲奈に、イシュトは更に詰め寄り、正面から見据える。
「聞こえなかったか?
俺は、お前の考えが知りたい、と言った。
お前の口から、ききたい。
二度も言わせるな」
掴まれた腕がじんじんと熱い。
視界が歪む。
思考が白くなる。
だけど……
白く濁った思考をぐっと手繰りよせ、意識を凝らし、拍動に集中する。
この世界に来てからの目まぐるしい体験が、次々とまぶたに浮かぶ。
この記憶は自分のものだ。
あたしの、記憶。