ラビリンスの回廊
轍
細かいことを気にする男は好きではない。
それがイケメンともなれば尚更。
だけど玲奈は、それがヴァンのやり方なのだとなんとなく感じていた。
軽口をたたくことで、玲奈に彼女らしさを取り戻させようとしているかのよう。
気まずさを一掃させるかのようなその台詞に、玲奈はなんとなく、つい先程しおらしく謝った自分を呪った。
翌朝になると、
昨夜遅くまで話し込んでいたせいか、はたまた慣れない旅の疲れか、
ぎくしゃくとしただるい体に、玲奈は溜め息をついた。
頭もなにやらぼんやりする。
しかしそれとは反対に、晴れ晴れとまでは言えないが、心はまあまあ軽いように感じた。
だから朝食をとったらすぐに出発と言われても、玲奈になんら不満はなかった。
出発して約一時間。
相変わらずの赤い地肌が続くことに辟易しはじめた頃、遠くに一軒の山小屋が見えた。
「……あれ」
首を傾げたルクトが、歩みを止めて後ろを振り返る。
「エマ、あんなとこにあんなもの、あったっけ?」