ラビリンスの回廊
「イシュトくん、や~らし~」
というルクトの野次りに、イシュトは無言を決め込む。
そのルクトの声が聞こえたのか、それとも窓に影が映ったのか、カチャリと小さな音がして、扉が開く気配がした。
そこから顔を出したのは、玲奈と同じくらいの年格好をした女の子だった。
彼女は茶色の髪をふんわりとアップにしており、目鼻立ちの整った大人びた顔立ちをしていた。
少しだけきつく感じる切れ長の目を警戒でいっぱいにし、玲奈たち一行をまじまじと見ている。
ルクトが話かけようとしたが、怯えたのか多少怯んだ様子を見せた。
彼は適当な話しかけ役を探すべく振り返り、自らの一行を順番に見る。
無口なエマ、
ぶっきらぼうな話し方の玲奈、
俺様なイシュト。
白羽の矢が立ったのは、交渉の巧みそうなヴァンだった。
「ヴァンくん、宜しくー」
丸投げ的に託したルクトに苦笑いを見せ、ヴァンは物腰柔らかく話しかけようと、数歩前に出る。
その時、女の子の視線がイシュトを凝視していることに気付いた。