ラビリンスの回廊
屋敷に入ると、ツンとした新築の匂いが鼻についた。
建てられて間もないらしく、装飾品のようなものはほとんど見当たらない。
必要最低限の家具はあったものの、どれもみな簡素なもので、生活臭を感じない。
あまり人様の家をジロジロ見るわけにもいかないが、人の住んでいる気配が薄く感じて、玲奈はなんとなく落ち着かなかった。
大きな屋敷に一人で住んでいるとのことで、奥さんも子どももいないという村長。
そのせいかと玲奈は自分を納得させた。
部屋はたくさん余っていると言われ、三つ貸し与えられた。
玲奈とルノ、ヴァンとイシュト、ベンス兄妹という組み合わせで泊まることになり、玲奈は少し眉をひそめた。
わがままを言っている場合ではないが、まだ会ったばかりのルノと同室というのは嫌だと思ったからだ。
しかし口に出すには至らず、部屋割りを言ったルクトをちょっとだけ睨みつけ、仕方なく玲奈はルノと一緒に部屋へと入っていった。