ラビリンスの回廊
話しかけもしないイシュトの手を、ルノは自らの胸へと導く。
体つきのわりに豊満なそれに、触れたところでイシュトの顔色は変わらなかった。
唇と唇が触れ合ったときも、ルノの熱情を持った舌がイシュトの中へ侵入したときも、一向に変わらなかった。
ルノは唇を離し、じっとイシュトを見つめる。
些細な変化も見逃さないようにというものだったが、何も見つけることは出来なかった。
イシュトの服に触れ、鎖骨をあらわにして唇を寄せる。
しるしを刻みつけ、ゆっくりと舌でなぞった。
そしてようやく、言葉だけがルノへと届いた。
「何が望みだ?」
それは、ルノの体に興味があるようには思えない言い方でもありながら、今すぐ抱いて欲しいといえば抱いてくれるだろうと思わせる言い方でもあった。