ラビリンスの回廊
「それからもう一つ。
ああこれはルノさんへもなんですけれど」
突如話題を向けられ、ルノは黙ってヴァンに顔を向けた。
それを確認し、村長も自分に視線を向けてよこしたのを見てから、自らはゆっくりと玲奈の目の前にある皿へと視線を移す。
そこにはまだ食べ掛けの固いパンと、素っ気ないグラスに入った水が並べられていた。
「あの食事、どう思われます?」
ハッと顔を見合せた二人を見て、ヴァンは小さく微笑んだ。
そんな二人を見ても訳もわからずに、ポカンと自分のパンと水を見比べている玲奈だけに聞こえるくらいの大きさで、ルクトがそっと言葉をかける。
「レイナちゃん。
レイナちゃんが俺らと同じ食事をせずに、パンと水をとってるのって、明らかに不自然じゃない?
なのに何も言わないどころか、まるっきり気にもしないのはおかしいっしょ?
でもさ……元々知ってたら?
知ってたら、気にならないっしょ?
つまり……」
言葉の途切れたルクトの視線を追うと、村長とルノがヴァンに追いつめられているところだった。
「つまり、彼らはレイナちゃんのことを知っている。
それも、正体をね──」