ラビリンスの回廊
「あ、あの……私は、レイナさんの食事に触れてはならないと思ったんです。
何か理由があるのかもとは思いましたが、それをお聞きしてレイナさんの気を悪くしてはと」
ルノの言い分ももっともであった。
イシュトたちと行動を共にしているということは、レイナ自身も高貴な身分である可能性も高い。
立ち居振舞いは雑であっても、レイナはイシュトに敬語を使わないから、そう考えさせるには充分だ。
そんな彼らの気を悪くしてしまっては、という計算がなされたとしてもおかしくはないし妥当だろう。
しかしヴァンはルノが考える以上にルノたちの行動を良く見ていた。
「一度も視線を向けてなかったのに?」
「え……?」
「村長さんがそう言い繕うなら、信じたかもしれません。
このパンや水を用意したのはエマさんですし、準備した食事を断られたら印象は強くなりますからね。
食卓ではわざわざ見るまでもない。
でもルノさんは違う」