ラビリンスの回廊


「……見当はつけているのだろう?」


吐き捨てるように言った言葉に、ルノはフッと曖昧に息をもらした。


「私は連れ戻せとの命を受けただけです。
王も何も仰いませんでしたし」


「だがそんなに簡単に『王に頼まれ連れ戻しに来た者です』なんて言ううつけには見えない」


イシュトの切り返しに、ルノはちょっと目を見開いたのち直ぐに態勢を立て直した。


「買い被りというものです」


うっすらと微笑むルノに対し、イシュトは返答が聞こえなかったかのような言葉を繋げた。


「女狐、か?」


「イシュト様、そのようなしもじもの者が使うあだ名を口になさってはいけません。

誰が聞いているかわかりませんよ。
充分ご注意下さいませ」


ルノの言葉を鼻で笑い、イシュトは剣呑な瞳をすいと細めた。


「忠告か」


「どうとって頂いても構いません」


「……わかった」


そしてイシュトはヴァンに視線を送る。


目の前で展開された会話についていけなかった玲奈は、目をしぱしぱさせた。


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