ラビリンスの回廊
「聡明なお二方のこと。このような小細工は、直ぐに看破されると思っておりました。
しかしヴァンツ様に手引きして頂いた兵たちが敵わぬのに、私たちが武力でどうこう出来る筈ありません。
これが精一杯の苦肉の策です」
村長の役をしていたものも、彼女の言葉に呼応するよう、もぞもぞと口を開く。
「一見大掛かりではありますが、見掛けだけで、殆ど手はかかっていません。
更に言えば『手を尽くした』と王たちに知ってもらうだけでいいのです」
「それってつまり──」
他国の事情には耳を塞ぐスタンスである筈のルクトが、思わず口を挟ませる。
一同の視線が自然とルノに集まり、受け止めた彼女はぐっと顎をひいた。
それをみたヴァンが、口角を引き締める。
ルノを見つめて少し考えたのち、イシュトと目を合わせ、小さく頷いた。
そしてルノに向かって──というよりもその場にいる者たちに宣言するかのように、重々しい口調で言った。
「王の命令に従った風を装った……ということですか」