ラビリンスの回廊
「お前たちの気持ちはわかった。
だが、俺の言うことをきくようなら、こんな周りくどいことはしていない。
戦争を止めろと言ったってあの色ボケが聞き分けないから、俺はこうして旅をする羽目になっているんだ」
自虐的な笑みが浮かんだのを、ルノたちは見逃さなかった。
何も言えずに静かにイシュトの言葉をきく。
イシュトは玲奈たちに向き直って、無表情に言った。
「こちらの都合で足止めさせて悪かったな。
行くぞ」
くるりと踵を返し、扉へ向かって歩き出す。
あまりに突然のことで、玲奈たちはすぐに反応することが出来なかった。
イシュトが今回のことに責任を感じているのかはわからないが、少なくとも何か思うことがあるようだ。
ルノがそんなイシュトの背中を見て、振り向かないのを承知で言葉を発した。
「わたしは……!」
イシュトは足を止め、背中を向けたまま言った。
「ルノ。ついてくるかどうかは、お前が決めろ」