ラビリンスの回廊
試練
「いやー、まさか集落を作っちゃうとはねー。
ルノちゃんの発想力を見習わなきゃ」
ルノは結局、一行に付き従うとは口にせず、黙ってイシュトたちを見送った。
誰一人振り返りはしなかったが、集落を出てたところでゆっくりとルクトだけが振り返る。
はりぼての集落を見て、不謹慎ながらも、ルクトは改めて感心した声を上げたのだった。
玲奈も、ルクトの声に促されるように後ろを振り返る。
ルノとは殆ど喋る機会もなかったし、イシュトたちの国の状況も情勢も知らない。
ルクトはイシュトの方を向きながら、言った。
「いやーしかし、本音をいえば、イシュトくんはルノちゃんに来て欲しかったんじゃないの?
ルノちゃん、どうするつもりなのかなぁ」
相変わらずの軽口だが、ルクトの表情が柄にもなく沈んでいるように玲奈には見えた。
口調の軽々しさに、ルクトの深淵など窺い知ろうとはせず、玲奈は呆れながら呟いた。
「それは自分だろ」
「ありゃ、バレた?
だ~ってさぁ、旅に美女はつきものでしょ」
あははと笑うルクトを玲奈はギロリと睨み付けたのち、力を込めてそっぽを向いた。
「あ、もちろんレイナちゃんも華だけどね」