ラビリンスの回廊
とってつけたような言い方なのが腹立たしい。
いかにも自分が気にしたかのように扱われた、と感じた玲奈は、むっつりと黙り込む。
そんな玲奈とルクトを、チラリと見たイシュトだが、何も言わずに視線を戻した。
ヴァンやエマは玲奈に視線ひとつ寄越さず、顔色も変わらない。
ルノと山小屋で出会う前の人数に戻っただけなのだから、何もおかしなことはないはずだ。
なのに、玲奈は空気の変化を敏感に感じていた。
ルノと別れてからまとわりついている、いやな空気。
張りつめているのとも違う。
重苦しいような、息苦しいような、そんな空気だ。
ルクトの言葉は、いつもならそんな空気をはねのけるか、はたまた周りに感じさせないようにしてきたと玲奈は思うのに、
今回は効き目がなく、それにも違和感を感じていた。
なぜイシュトに向かって「ルノがいたほうが良かったのでは」などとルクトは言ったんだろうと疑問には思ったが、
訊く前に「華があるから」なんて言って、先回りしてはぐらかされた気もする。