ラビリンスの回廊
ヴァンが表情そのままに、フッと目を細める。
見透かすようなその視線は、ルクトに向かって真っ直ぐに注がれている。
「ルクトさんらしくありませんね。
向かってくるものは容赦なく斬り捨てるあなたが、路傍の石の心配ですか」
「ルノちゃんは向かってきたわけじゃないでしょー。
しかしヴァンくんはキッツいねー。
イシュトくん以外は路傍の石?」
当然です、と返しそうなヴァンへ、ルクトは苦笑いを浮かべた。
そしてヴァンからイシュトへと、視線だけを移す。
口にした言葉はヴァンに放ちつつも、イシュトへ向かって言ったのは確実だった。
「ヴァンくんの優秀な執事は、甘っちょろいことを言ってたよねー。
まぁうちのお嬢様もだけど。
ただ、お嬢様は『世間知らず』だから、ね。
でも執事くんは違うっしょ?
──わかってる筈だ。
それとも、わかっててあの仕打ちなの?
見えないところなら別にいいってわけか、半端だねぇ」
「……何が言いたい」
「別にー。こっちの話」
「仕方ないだろう!
連れて行ったら、アイツもろとも──」