ラビリンスの回廊


「悪意ってなんだよ……あたしはただ」


ルノの元へ辿り着いたとしても、自分には何も出来ない。

わかっているからこそ、語尾に力が入らず、心もとなくなっていく。

しかし瞳の奥にある光は消えない。


「ただ、処罰なんておかしいって思うから、だから」

「だから、お前に何が出来る」


再び言い重ねられた言葉に、玲奈はかぶりを振った。


「何も……あたしには何も出来ない。だけど……ほっとけないだろ」


正鵠を射られたこともあり、繕いもせず感情をぶつける。


イシュトは受け止めも受け流しもせず、全て吸い込んでしまいそうな瞳で見返している。


「あんたは……あんただって、本当は……」

「レイナさん」


名を呼び、嘆息したのは、ヴァンだった。


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