ラビリンスの回廊
「ならば貴女が、彼女の代わりに捕らえられますか?」
「あたし……?」
玲奈が自分のほうへ意識を向けたのを確認したヴァンは、
ともすれば冷薄に見えそうな表情で、訥々と語った。
「イシュトを連れ戻す任務は失敗したルノも、レイナさんを連れて帰れば処罰は見送られるだろう、ということですよ。
我が王は『光』をも欲しているのですから。
しかし貴女が捕らえられてしまったら、シェル王国は希望を失ってします。
ルノがそこまで――シェル王国の未来までも考えていたとしたなら、彼女の意思も踏み潰すこととなるでしょうね。
レイナさん。それでも行くおつもりですか?」
ヴァンの言葉を最後まできいたとき、玲奈は何故か思わず、イシュトを見ていた。
ルクトがルノのことを言ったとき、イシュトの口をついた言葉――
『連れていったら、アイツもろとも』
――イシュトを捕らえるための追っ手は、ルノだけでなく、更には玲奈にまで手が及ぶ危険があると考えていたのだ。
その先にはブラウ王国とシェル王国の戦争がある、と。
「俺は、捕まるわけにはいかないんだ」