ラビリンスの回廊
そして玲奈がそれを聞き、フードや地面に滴り落ちていたものが何であったのかを認識するまで、ほんの数瞬さえもかからなかった。
喉の奥で息が擦れる。
「あれが処罰ってわけ……? あんなひどいこと……」
目が逸らせずにいる玲奈の腕に触れそうなほど近くへ、エマが隣に立った。
「あたしたちが大人しく捕まんなかったから……ルノに捕らえられてブラウ王国へ行かなかったから」
呟いた玲奈に、イシュトが苦々しく頷く。
「ああ、そうだ」
「レイナさん……あまり思い詰めないで下さい。あなたの、ましてやイシュトのせいではないのですから」
ヴァンの言葉に、玲奈はふるりと首を振り、空から地上へと視線を落とす。
「あたしのせいじゃない……?」
小さく繰り返すと、一旦目を閉じ、深く息を吐いた。
「違うな。あたしのせいだ」
「レイナさん、それは――」
ヴァンの言葉を遮り、首を振る。
「あたしのせいなんだ。あたしが弱いから。あたしが無力だから。あたしがブラウ王国に捕まらなかったから」