ラビリンスの回廊


でも、と玲奈は続ける。


「あたしには、罪がある。逃げ出した罪が。

だけど、あんなひどいことをするやつが悪いに決まってるんだ。

だからあたしはマシなほうだとか、そんなこと言うつもりはないよ。

そんなんじゃなくて、あんなひどいことするやつに、この世界の大切なものは渡せないって思うから。

そのために、あたしは進まなきゃならない。
あたしは、立ち止まれないんだ」


次に目を開けたとき、玲奈は強い意思の籠もった瞳で、イシュトを見据えた。


「悪いけどこれ以上、あんたの親の思い通りにさせる気ないから。企んでること全部、ぶち壊してやる……!」


「思惑通りにさせるつもりがないのは、俺だって同じだ。そのための旅なんだからな」


イシュトは口角の片端を上げ、不敵に返す。


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