ラビリンスの回廊
しかし……
納得出来るかはともかく、恐らくそれで間違いないと思う一方、釈然としないものを感じていた。
『イシュトを連れ戻す』という任務を失敗したのは確かだ。だが戦神オーウェンを失っては、ブラウ王国の主戦力はもとい、志気にも大幅に関わる。
オーウェンの武勇伝を本人以上に誇りにし、憧れている兵もたくさんいるのだ。
兵たちに慕われているオーウェンが死んだ――それも同じ王国のものに処罰されたとなれば、いくら王の命令なれど、志気が低下し混乱するのではないか。
たった一度王子を捕らえられなかったくらいで、命を毟りとられてしまうなんて。
口にはしないだろうが、そう思う者が出てもおかしくはない。王への不信感を抱くものなら尚更。
はかりにかける類いではないが、あまりにも代償が大きいのではないか。
シェル王国を攻めようと、好機を窺っているこの時期に、はなはだ奇妙だ。
――なにかがおかしい。
ルノは考えを巡らした。