ラビリンスの回廊
ルノは、オーウェンの芝居を見抜いていたわけではない。
が、ルノを追走する側である筈のオーウェンが、あんな姿で見つかったことで、彼女はおぼろげに理解したのだった。
オーウェンのことに関しては、王妃の仕業に違いないとあらかた見当をつけていた。
証拠があるわけではない。だが国力を削ぐに等しいことを王がしたとなると、今までのことを考えれば、王妃の存在がそうさせたのだという結論に導かれる。
「王は、王妃の傀儡同然にまで堕ちてしまったのか……!」
あくまでも王の命だとルノは考えていた。
王妃がそそのかしたにせよ、最終的に決定を下したのはブラウ王だと。
そうでなければ、オーウェンを討つなど、出来るわけがないのだ。物理的には可能であったとしても、王の命にない戦神ほどの重要な兵士の死は、討った者にも罰を与えかねないものだからである。
だからルノは、王が「刃向かうなら切り捨ててよし」と前もって命令していたのだろうと考えていた。
まさか王妃の一存で、王に断りもなく駒を動かしたのだとは考えが及ばず。
もう既にそれだけの権力を掌握しているとは、思っていなかったのだった。