ラビリンスの回廊


「そんなの……!
なにが『認められない』だ。
頼んでみなきゃわかんねぇだろ!」


がなり立てる玲奈に、ルクトがまあまあと両手で制す仕草をする。


「レイナちゃん、吠えない吠えない」


「吠えてねぇよ!

おい、エマが連れてかれてもいいのかよ」


「全くしょうがないよねぇ、ヴァンくんは」


やれやれと首を振るルクトの、まるで他人事みたいな言い草に、玲奈の怒りが頂点に達した。


「しょうがないのはおまえだよ!」


玲奈の怒鳴り声をさらりと流し、ルクトはまたもや首を振る。


「いやいやいやいや、ヴァンくんっしょ」


再び玲奈の怒鳴り声が飛び出す寸前、ルクトは言った。


「覚えてないとは言わさないよ、ヴァンくん」


その言葉が玲奈に聞こえたときには既に、ルクトはヴァンの真正面へ立ち、ヴァンの喉元へ切っ先を向けていた。


対するヴァンは、虚をつかれた顔をしつつも、反射的に構えた剣でルクトの剣先をうけとめている。


「エマに交際を申し込むなら、まず兄であるオレを通してもらわないとって、オレ言ったよね?」


ルクトの目がヴァンを捉えて、笑った。


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