ラビリンスの回廊


「……おい、跳ねっ返り」


イシュトが、ぎりぎり玲奈に聞こえるくらいの小さな声で、囁いた。


振り返りかけた玲奈に、制止が追加される。


「待て、こっちを向くな。……そう、そのままだ」


だが、じっと玲奈を見ていたハルミは、些細な動きを目ざとく見つけていた。


イシュトのほうを向きかけた玲奈に一瞬、不快を露わにしたが、ふと何かを思いついたようで、気紛れをおこした。


「いちいちお仲間と話し合わないと決められないってんなら、相談すれば?

ただし早くしてね」


そう言ってポンポンと紅玉を手玉代わりにし始める。


ルクトが肩をすくめてみせながら、玲奈に言った。


「どうせ何も出来まいと判断したんだろうねー。まああながちハズれちゃいないところが切ない。……で、イシュトくんは何か気付いたの?」


ルクトの声掛けへは返事をせず、イシュトは玲奈に訊ねた。


「あの女は、お前と同じところから来たんだな?」


「ああ」


頷いた玲奈に、イシュトは「そうか」とだけ返す。


「イシュトくん、それが何か打開策に結びつくってわけ……?」


ルクトは一瞬首を傾げたが、直ちに「あ、そっか」と合点のいった声をあげた。


「俺様に、任せろ」


イシュトが余裕綽々で告げると同時に、「決まったー?」とハルミから声がかかった。


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