ラビリンスの回廊


キュッと紅玉を握り締め、反対側の手では髪をかきあげる。


その仕草の延長で玲奈を見下すと、首をこきりと回した。


「で? 欲しいの? 欲しくないの?」


玲奈はさすがにイシュトを見ることはしなかったが、どう答えるべきか、考えついていたわけでもなかった。


ここは適当に答えて、あとは何か策があるというイシュトを信じるしかないだろう。


あれ、と思う。


――信じる……?

あたしが、あいつを……?


自分で自分に驚くとはこのことだ。


イケメンに触れられるだけで、拒否反応を起こして気絶するような自分が、イシュトを信じるなんて。


しかし実は、心の奥では、もう少し前から気付いていたのかもしれないとも思う。


彼は、見てくれがいいだけとは違う。


彼は、ちゃんと、血の通った人間だ。


だから、信じられる。


「ねえ、まぁだ決まんないわけ? じゃあ……そうだな、暴露大会と行こうか。ね、玲奈!」


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