ラビリンスの回廊


ハルミを除いた、その場にいたもの全員が、ハルミの手に握られた紅玉を見ていた。


恐ろしさ故か、その手はぶるぶると震えている。


そのままイシュトへ渡すと思われた、その瞬間。


ハルミはぎゅっと目をつぶると、紅玉を地面に叩きつけた。


「……っ!」


咄嗟にルクトとヴァンが手を伸ばしたが、届かない。


イシュトも、紅玉と地面の間に割って入ることは出来ず。


間に合わなかった。


地を転がった紅玉は、玲奈の足元まで来た。


一見どこも欠けたりヒビが入ったようには見えず、玲奈は手を伸ばして屈みかける。


しかし玲奈の足にコツンとぶつかると、ピシピシッと大きく亀裂が入り、音もなく2つに割れてしまった。


「あ……!」


玲奈が上げた声で、周りにいた者たちは我に返った。


「割れた……っ」


触ることも、目をそらすことも出来ずに、立ち竦む玲奈。


エマが、割れてしまった紅玉へ静かに近付き、そっと指で触れる。


黙ってエマを見るルクトの視線に気付くと、エマはゆっくりと首を横に振った。


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