ラビリンスの回廊
「やめよう、レイナちゃん。彼女にくってかかったって、アレは戻らないんだから」
「そうかもしれないけど、でも……!」
怒りに任せてハルミに飛びかかろうとした玲奈に、一瞬身構えたハルミだったが、
玲奈の勢いがルクトに押さえられたのをみて、挑発するように名を呼んだ。
「玲奈!」
ハルミからするとルクトの影になっている玲奈の表情は見えないが、自分の声は無視されていないと確信があった。
「あたしの大事なモンとっておいて、他人の大事なモン壊すななんって、よく言える。
あんたにはあたしを責める資格なんざ、これっぽっちもないよ。
だってあんたが先にしたことなんだから」
「だから知ら……」
ハルミの言葉に、玲奈が抗議した瞬間。
「おい」
イシュトが口を挟んだ。
誰に向けてのものかは一瞬わからなかったが、視線はハルミを真っ直ぐにとらえていた。
威圧するでもなく、躊躇うこともなく、一直線に向けられた声に、ハルミは少し気をひかれたようであった。
「いつまでも埒があかないのは御免だ。
順を追って話してみてくれないか。
コイツが何をしたのか」
コイツ、のところで、玲奈を顎でさす。
「『おまえたちは関係ない』なんて言うなよ。
おまえが紅玉を壊し、おまえらのいざこざに俺たちを巻き込んだんだから。望む望まないは、お互い様だ」