ラビリンスの回廊
「で、どーだった?」
玲奈が『紅玉』を取りに行くと決めたのち、エマは国王にお伝えすると言ったのだった。
その首尾をきくと、エマは小さく頷いた。
「出発して良いそうです。
ただ、途中で姫様に何かあってはなりませんので、護衛と、お世話係の私がご同行します」
エマの言葉に玲奈は、軽く眉をしかめる。
「……なにかあったらって。
護衛なんていらねーし」
溜め息と共にぼやいた言葉を聞き咎めることもなく、エマは玲奈から離れ、扉を開けて人影に声をかけた。
ゆっくりと部屋に入ってきた人物に、玲奈は目を見開いた。
その人物は、それに気にする素振りもなく、ハキハキと部屋いっぱいに広がる声を上げた。
「初めまして、姫様。
護衛のルクトと申します」
細身だがガッチリとした体格に、意志の強そうな水色っぽいグレーの瞳。
赤茶けた髪は、肩まで無造作に伸びていた。
人懐っこそうな笑みを浮かべながら、自分を凝視している玲奈に、一歩近づく。