ラビリンスの回廊


ハルミは玲奈を目に捉えながら、吐き捨てた。


「玲奈――その女は、あたしの彼氏をたぶらかしやがったんだんだよ。

あたしの彼氏はフツーだからな、イケメン苦手だからってふざけんじゃねーって話だ」


「――具体的には?」


詳細を聞き出そうと言葉を投げたルクトに、ハルミはギロリとした視線を向ける。


「『逆ナンされた』って言ってた。その日から玲奈のことばっか気にするようになったんだ。
そいつがたぶらかしたからだろ!」


「逆ナン……?

あたし、そんなことしてねーけど」


「嘘つくな。じゃあ誰がやったってんだよ。

あんたがやったんじゃなけりゃ、なんであんたのことを気にするんだよ。あんたのことを気にしてるのが何よりの証拠じゃねぇか!」


「ちょい待ち」


益々ヒートアップしそうになったところで、ルクトは的確に言葉を挟み入れた。


「えっと、カレシさんは、『レイナちゃんに』されたって言ったの?」


「い、や……それは言ってないけど、でも」


僅かに言いよどんだハルミの言葉のあとをつぐ。


「レイナちゃんのことを気にするようになった」


「そうだよ。だから」


「だからきっとレイナちゃんがした、と?」


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