ラビリンスの回廊
刺激しないよう、しかし彼女がプライドは保てるように。
ルクトがかけた言葉は、ハルミの心の奥に一石を投じたようだった。
「わかってたけどレイナちゃんを憎んだのは、その人物が君の知ってる――否、身近な人だからかな……?
心に浮かんだ不安を追い払うために、誰かにその恨みを引き受けてもらわなきゃならなかった。
でもそれは当人じゃなく、他の誰かでなければいけなかった。
何故ならその身近な人を信じられなければ、君はその場にいられないから」
ルクトの、まるでハルミの世界を見てきたかのような言い方に、誰もがぴくりとも動けなかった。
玲奈がぽつりと呟く。
「まさか……それって……」
ハルミを見ると、大して見知っているわけでもないその表情や様子からでも十分に、玲奈の思い付いた人物像が、あながち外れてないと知らされた。
「龍佳(りゅうか)……『朱龍』のトップ……」