ラビリンスの回廊
一瞬たじろいだ玲奈だが、かろうじて体勢を立て直す。
ルクトと名乗った彼は、歳は20そこそこだろう。
玲奈の目の前で窮屈そうに片膝を床につけ、片腕を曲げて拳を胸の前で強く握り、頭を下げた。
堅苦しい所作に、玲奈は頭をポリポリとかいた。
「せっかくだけど、自分の身くらい自分で守るから」
イケメンでないといっても、一緒に旅をするのは勘弁して欲しい……そう思いながら言ったが、その言葉はルクトからもエマからも否定された。
なんだかんだで二人に─特にエマに─言い含められ、渋々旅の同行を許した。
決定打は、エマの「私は自分の身を守れません」だった。
自分だってエマを守るくらいは出来ると言いたいのは山々だったが、果たして本当にこの知らない世界で、力を思う存分振るえるかはわからない。
精一杯不機嫌な顔をしながらも、頷くしかなかった。
「旅に必要なものは用意してあります」
食事を終えた玲奈のコップに水を注ぎながら、エマはそう言った。
王たちには会わずにこのまま旅へ行くことになると言われ、玲奈は面倒くさそうに立ち上がった。
「じゃ、行こうか」