ラビリンスの回廊
すでに準備は出来ている、とエマが言った通りまとめられた荷物を背負って、三人は部屋を後にする。
ふと玲奈は、気になっていたことを口にした。
「そういや、なんでこの部屋は、廊下と違ってこんなにショボいの?」
エマは一瞬言葉に詰まった様子だったが、チラリと玲奈を見ながら言った。
「おっしゃってる意味がわかりかねますが、もし装飾の違いをおっしゃっているならば……」
すいっと視線を前に戻し、言葉を続けた。
「『贄』に必要ないからです。
世俗の穢れを身の回りから払わねばなりません。
それに……死にゆくものに贅沢は必要ない、と。
代々の『贄』もあの部屋に」
「代々……ねぇ。ふーん。
でもさ。『紅玉』をずっと持ってたら、『贄』なんていらねーじゃん」
なんでそうしねーの?という玲奈の問いに、エマは口をつぐんだ。
代わりにルクトが、話題をそらすかのように喋りだした。
「それより姫。
『贄』や『紅玉』の話は他の者には決して明かしてはなりません。
狙ってるものはいくらでもおりますからな」
身分も隠さねば、と言ったルクトに、玲奈は「じゃあとりあえずその喋り方やめたら?」と言った。