ラビリンスの回廊
それを合図に、取り囲んだ輪の隙間から、数人の男がゆらりと玲奈の前に現れた。
「な……っ」
青ざめた玲奈の顔を見て、周りの女たちは嬉しそうに声をあげる。
「さっきの余裕はどーしたぁ?」
「あっは、あの顔ー!」
「ケッサクー!」
野次を構う余裕もなく、玲奈はジリジリと後退する。
「ムダムダァ」
「逃げられるわけないじゃん」
赤い女が軽く手を挙げると、騒ぎたてていた女たちが一気に静まりかえる。
女は満足そうに微笑んだ。
「その顔。いい気味だよ。
本当なら男たちの手を借りるのは嫌なんだけどね。
あんたの弱点となれば、そうも言ってられない。
あんたを相手したら、こっちも無傷じゃ済まないからね。
……じゃ、後はよろしく」
果たして話を聞いているのかわからない玲奈に言うだけ言って、最後の方は男たちに向けて挨拶する。
それだけしたら、赤い女は鉄パイプをポイと手から放り、くるりと背を向け去っていく。
周りにいた女たちは、ニヤニヤと振り返りながら、その赤い女の後ろをついて行った。
後に残されたのは、玲奈と男たち、それにハルミだった。