ラビリンスの回廊


そんなルクトに向かって盛大な溜め息をついた玲奈は、むっつりと黙り込んだ。


ルクトはそんな玲奈ににやにや笑いながら、ぼふっと玲奈の頭から布をかぶせる。


「……邪魔なんだけど」


そう言って払いのけようとした玲奈の手を、エマが止めて言った。


「街を歩く時は、高貴なるものの証は隠したほうがよいですね」


そしてエマは、手際よく玲奈の髪をまとめあげ、改めて布で隠した。


城から出て街へ入ると、昨夜とはうってかわった賑やかな様子に、玲奈はチラチラと視線を左右に向けた。


道行く人々と視線が合いそうになると思わず目を反らしてしまうのは、自分がこの世界のものでないからなのか。


それとも、『贄』であることが、王国の民の望みであるからなのか。


自分はこの世界にいる間ずっと、こうやって容姿を隠していかなければならないのか。


そう思うと、日本に─自分の世界に帰りたいと切に願った。


こんな不便な格好から、早く解放されてぇ……
玲奈は、キュッと唇を噛んだ。


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