ラビリンスの回廊
がやがやと活気のある街を見て、玲奈はグッと拳を握った。
この街、この王国は、何度も何度も『贄』によって栄えてきたのだ。
そして次は自分が。
なんだか癪にさわって、玲奈は八つ当たり気味にエマに質問をぶつけた。
「なぁ。何日くらいかかるんだ?」
荷物の量をみると、とても日帰りでいける距離とは思えない。
その問に、エマは表情を変えることなく言葉を返した。
「わかりません」
「あ゛?」
予想もしなかった答えに、玲奈はぴくりと眉を上げ、思いっきり威嚇するように睨み付けた。
「何事もなければ早くて一週間といったところですが、“アレ”が今でも彼処にあるかどうか……
なので、わかりません」
玲奈はひそめた眉の力を抜く。
「そっか……願いの叶う『紅玉』を欲しいやつは……」
「玲奈ちゃん!」
ルクトが慌てて止めたが、間に合わなかった。
あ、と思ったときには既に『紅玉』と口に出していて。
思わず周りを見たが、誰も耳咎めてはいないように玲奈は感じた。
安堵の息を吐きかけた、その瞬間。
「その話、もう少し詳しく聞かせて頂けますか?」