ラビリンスの回廊


びくん、と体を強張らせ、恐る恐る声のした方を見やる。


玲奈は、げ、といいかけて、それを無理矢理飲み込んだ。


声を掛けてきたのは、すらりとした長身の20歳くらいの男。


柔和そうな穏やかな顔立ちをしているのに、淡い銀色の髪は短く勇ましく跳ねているのが印象的だった。


玲奈の苦手な、麗しい美貌の持ち主である。


もちろんそんなことを知らない相手は、『紅玉』を口にした玲奈ににこにこと近付いてくる。


ジリジリと下がる玲奈に、エマが男との間に入ってくれた。


「なんのお話ですか?」


「いえ、そちらのお嬢様が、『紅玉』についてお話をされていたようでしたので、詳しいお話をお聞かせ願えたらと思いまして」


丁寧な口調で返す男に、エマは「そんな話、してません」とにべもなく切り返し、玲奈を促して先へ進もうとした。


「だから無駄だと言ったんだ」


銀髪の男の後ろから、腕組みをしたもう一人の男が姿を現しながら、そう言った。



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