ラビリンスの回廊
微妙な空気の流れる中、ルクトはそれを払うかのように明るく言った。
「じゃあ、自己紹介も済んだし、ぼちぼち行きますか!」
そんなルクトの笑顔につられるかのように、玲奈たちは立ち上がった。
玲奈は『贄』にならぬため。
イシュトは戦を回避するため。
それぞれの思惑を抱えながら、共に『紅玉』を目指す。
玲奈がふとエマに目をやると、彼女は遠くをじっと見つめていた。
玲奈の視線に気付いた様子で、玲奈に問い掛けるような顔をした。
それに対し、玲奈は何の気なしに言葉を掛ける。
「何かあった?」
真剣な眼差しだったことを思い出しながら玲奈がそう言うと、エマは小さく「いえ」と呟いた。
「ただ、道のりを考えていたのです。
期日までに帰ってこれるとよいのですが」
その言葉に、玲奈は眉をピクリと動かした。
「期日……?」
エマはチラリと周りを見て、自分たちに注目がないことを確かめた。
男性陣は荷物の割り振りなどで忙しそうなのを見て、小さな囁き声で玲奈に言葉を続けた。
「ええ、『贄』が捧げられるのは運命の場所、時間、方法でなければなりませんから」